研究レポート

2022.08.24

スピルリナから抽出されたフィコシアニンがグッピーの色調・成長・消化酵素に与える影響

フィコシアニンは、藍藻類の一種であるスピルリナの主要な色素の一つであり、脂肪酸を多く含むことから栄養補助食品として利用されています。今回は、フィコシアニンを含む餌をグッピーに与えたときに、グッピーの体色、成長、消化酵素の活性への影響について調べた研究をご紹介します。

本研究のポイント

グッピーにフィコシアニンを餌として与えた結果、下記のことが明らかになりました。

  • グッピーの見た目が鮮やかになる
  • グッピーの成長(体重・体長)を促進させることができる
  • グッピーの各種消化酵素の活性に影響を及ぼす

実験方法

グッピー80匹を無作為に8つの水槽に分けて、フィコシアニンの含有量を変化させて下記の項目を調査しました。

表1. 用いた餌の種類

◯調査項目

1|体色

2|体内化学組成

3|消化酵素の活性

※水槽内のパラメータは、pHを7-7.2、温度を23-24度になるように設定しました。給餌は1日3回行い、45日間養殖しました。

実験結果と考察

1|体色

0.15 wt%フィコシアニンの餌を与えたグッピーは、フィコシアニンを与えていない対照魚と比較して、色素量がおよそ2倍に増加したことが分かりました (表2)。また、明度(L*)を測定したところ、0.15 wt%フィコシアニンの餌を与えたグッピーにおいて最も高い値を示すことが分かりました。これらの結果より、グッピーにフィコシアニンを餌として与えることで、グッピーの見た目を鮮やかにさせられることが分かりました。

表2. 異なるフィコシアニン濃度で飼育したグッピーの総色素量と明度

2|体内化学組成

グッピーの体重と体長は、フィコシアニンの添加量が増えるにつれて有意に増加しました (表3)。また、フィコシアニンの添加量が増えるにつれてタンパク質の含有率が有意に増加し、一方で脂質と炭水化物の含有率が有意に減少しました (表4)。なお、体の水分率はフィコシアニンの添加量によって変化はみられませんでした。これらの結果より、グッピーにフィコシアニンを餌として与えることで、成長(体重・体長)を促進させることが分かりました。

表3. 異なるフィコシアニン含有率の餌で飼育したグッピーの体重と体長の増加率

表4. 異なるフィコシアニン含有率の餌で飼育したグッピーの水分率とタンパク質の割合

3|消化酵素の活性

フィコシアニンの添加量による各消化酵素の活性の影響について調査しました (表5)。脂肪を分解する消化酵素であるリパーゼの活性はフィコシアニンの増加により有意に低下しました。糖質を分解する消化酵素のアミラーゼの活性はフィコシアニンの増加に伴い有意に低下しました。一方、フィコシアニンの添加量が多いほど、タンパク質を分解する消化酵素のプロテアーゼの活性が高くなることが分かりました。これらの結果は、フィコシアニンに含まれる炭水化物および脂質の含有量が少なく、またタンパク質の含有量が多いことに起因していると思われます。

表5. 異なるフィコシアニン含有率の餌で飼育したグッピーの各種消化酵素の活性

まとめ

グッピーにフィコシアニンを餌として与えることで、グッピーの見た目が鮮やかになり、さらに成長(体重・体長)を促すことがわかりました。また、各種消化酵素の活性にも影響を及ぼします。

今後も、フィコシアニンが魚や動物の生育にもたらす影響について研究が行われることで、フィコシアニンの新たな効果や機能が明らかになることが期待されます。

出典:Biabani Asrami, M. et al., Effect of extracted phycocyanin from Spirulina platensison growth parameters, colorations, digestive enzymes and body chemical compositions of guppy fish (Poecilia reticulata). Journal of Survey in Fisheries Sciences 6, 1–8 (2019).


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